測定方法について
放射線測定器は温度変化に非常に敏感です。
当測定室では温度変化やバックグラウンド変化による測定誤差を最小限にするためにメーカー指定の方法よりもさらに厳密な環境管理のもと測定を実施しております。
室温・・・20℃(目安) 検出器温度・・・26℃
室温は20℃に限定せず検出器の温度が26℃およびピークのズレがない位置になるように室温調整を随時実施しております。良く温度管理が出来ている部屋で測定を実施する必要があると言いますが、シンチレーター(Nai)の結晶温度は検出器の基板温度より遅れて変化します。室温よりも使用時間に伴う結晶温度を一定に保つことがより重要です。検出器は2012年より温度変化による自動補正機能が搭載されているものに弊社でも変更しており、より正確な測定が出来る環境となっております。
また、空間放射線量が変動することで実測定の前に取得したバックグラウンド値が変わってしまい正確な測定が出来なくなるのを防ぐため、測定中、測定前後はALOKA TCS172Bにて線量に変動がないことを確認しながら測定を実施しております。
測定手順(随時実施)
1.機器校正の際はメーカーより指定された方法で調整校正します。
2.校正線源を必ず使用しピークのズレが無くなるように慎重に調整します。
3.精製水と空気でバックグラウンドを取得します。
4.検体としてバックグラウンドで使用した精製水と空気の計測をします。
5.測定結果を見た際に全ての核種が0(ゼロ)である事を確認します。
しかし、全てが0(ゼロ)である事は少ないため各値が0.1Bq/kg以下に収まっている事を確認します。
6.実検体測定の際は1検体測定を実施する前後に4番の測定をします。
7.5番の通りになっているかなっていない場合は1番からの再度繰り返します。
※温度変化がない場合であってもバックグラウンド値に変化がある場合が非常に多いため直近に取得したバックグラウンド値を使用します。
また、測定機器周辺の空間放射線値は0.02~0.03μSv/hr(ALOKA TCS-172Bにて計測)測定中に空間放射線の変動が確認できた場合はバックグラウンドの再取得をし測定をやり直ししております。
測定器にメーカー指定の温度確認方法以外に温度センサーを追加して温度管理を実施しています。外部センサー式で0.1℃単位のデジタル式の温度計をシンチレーション結晶近くの検出器外部に貼り付けています。この温度が常時一定になるように温度を大まかな温度をエアコンで室温調整しています。その他に測定器の両側に窓用結露防止ヒーターを各1台配置しさらに温風ヒーターと冷風機を配置し微妙な温度管理をしています。
測定実施中は入室及び退出を一切許可していません。これは人が動くことによって室温が変化してしまうからです。測定を開始した場合は測定器周辺の制御用パソコンを測定中は注視しグラフにズレが生じた場合は再測定を実施します。
これは測定員が動くことによる人体の発熱が検出器に与える温度の影響を限りなく少なくするためです。短い時間の測定はもちろん24時間の長時間測定であっても測定員がその場を離れる事はありません。ですので24時間測定は毎日実施可能としていません。長時間であってもその間はトイレはもちろん食事も制限します。誤差の範囲で済むのですが誤差のあるものこそ限りなくその原因をなくして計測することも大切と弊社では考えております。上記理由から1時間未満の測定を基本とさせていただいております。
そこまでしなくてもと思われるかもしれませんが、大切な測定をおこなっている以上、限りなく正確な測定を実施していくのが私達、測定に関わるものの務めです。温度計や湿度計と違いスイッチを入れれば計測できるものではありません。測定が正確だというのは測定方法がしっかり確立しているかどうかです。機器任せにせず私達人間が出来る範囲の調整をしその上で自動補正などを利用することでより良い測定をする事が出来るようになると弊社では考えます。
測定試料密度と測定下限値について
測定時の容器が大きく容器に入れた測定試料の密度が高いほど低ベクレルまで測定することができます。
試料名 |
質量 |
密度 |
定量下限値 |
I-131 |
Cs-137 |
Cs-134 |
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精製水 |
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牛乳 |
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精米 |
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乾燥堆肥 |
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バター |
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かぼちゃ |
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たまねぎ |
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じゃがいも |
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※上記表は測定器導入時のデータとなり現在の下限値ではありません。
上記の表のように同じ容器に同じ量(体積)を入れても重量が異なります。
鉄1kgと綿1kgの量の差をお考えいただくとお分かりいただけると思います。
密度が高くなるにしたがい検出できる下限値も下がっていきます。
反対に軽いものですと高い数値でしか計測できなくなってしまいます。
容器に試料を入れる際は可能な限り密度を増やすため隙間のないように圧縮して詰め込みます。
試料の種類によっては1,000ml = 1kg ではないため試料は多めにお送り頂いておりますのでご協力下さいますようお願い致します。体積が指定の容器に入れても足りなかった場合は追加で不足分をお送りいただくか少ない体積の容器で計測する場合がありますのであらかじめご理解の上、ご了承ください。
※100円ショップなどで1000mlや350mlの容量の容器がありますのでその容器のままお送りくださったり袋等に入れ替えてお送り下さい。その際は出来るだけ密度が高くなるように試料を詰め込んでご判断ください。
良く測定できる下限値は10Bqや4Bqと言いますがこれはあくまでも密度が1.0g/cm^3の場合です。1000ml容器に1000gの重さの試料が入った場合にその値までは検出できるという意味です。これはどのメーカーの測定器でも同じ事がいえますのでご理解の上、測定結果をご覧ください。
測定結果が下限値以下の場合は下限値以下と表記され下限値以上の場合のみベクレル値が表記されます。その際は「不確かさ」という表記も同時にされますがこれはこの数値の範囲は正確ではないということです。また、下限値以下の場合は放射線が検出されていない場合と検出はされたが不確かのため下限値以下と表記している場合があります。
※不確かさとは
放射線は温度などと違い一定に発生するものではなくランダムに発生します。
「誤差」が「真の値」からの測定値のずれを示すものであるのに対し、「不確かさ」は、測定値からどの程度のばらつきの範囲内に「真の値」があるかを示すものです。 放射線の測定は気温などの測定と違い一定して放出されるわけではありません。
測定をより精度を高くし計測するためには測定容器を大きくし測定時間を長くすることが必要です。
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